総集編 「外国為替」 2005 3 24
(解説)
貿易不均衡(貿易黒字、貿易赤字)の問題は、
単に、為替レートをいじっただけでは解消されないと思います。
昔、1ドル360円でした。
外国為替 foreign currency exchange 2004 2 9
昔、パイナップルは高級品だったのですが、
先日、スーパーマーケットに行ったら、
特売で、1個100円で売っていました。
さて、これが、安いと言えるでしょうか。
100円と言えば、今の為替レートでは、約1ドルでしょう。
世界を見渡せば、貧しい国では、
この1ドルを稼ぐのに、1日、労働をする人も多いのです。
ですから、1ドルのパイナップルは、
国際的に見れば、決して、安いとは言えないのかもしれません。
もちろん、これは、特売価格だったのでしょうから、
いつもは、3ドル(約300円)ぐらいで、パイナップルを売っているのでしょう。
これでも、安いと考えるでしょうか。
しかし、昔、為替レートは、1ドル360円だったのです。
ですから、昔ならば、3ドルのパイナップルは、1080円だったのです。
(こうなると、パイナップルは、安いとは言えないでしょう)。
さて、ここで、パイナップルと自動車で、貿易を考えてみましょう。
日本の自動車は、丈夫で、故障しないので、
中古でも、外国人に人気があります。
たとえば、ある外国人から、
あなたの自動車を、「1万ドルで売ってくれ」と言われたとします。
あなたは、その自動車を、何年も乗っていて、
自動車のデザインが流行遅れとなってしまったので、
1万ドルで自動車を売ったとします。
あなたは、その外国人に、「あなたの国の特産品は、何ですか」と聞いたところ、
外国人は、「パイナップルだ」と答えました。
そこで、3ドルで、パイナップルを買いました。
ここで、あなたの財布は、どうなったでしょうか。
1万ドルの収入があって、3ドルの支出がありました。
おそらく、財布の中には、9,997ドルが入っているでしょう。
あなたは、当面、外国のものを買う予定がなかったので、
9,997ドルを、円に換えようとしました。
ドルを売って、円を買うことになるでしょう。
何となく、お金持ちの気分になったでしょうか。
しかし、ここで、忘れてはいけないことがあります。
あなたが、「お金持ち」になれたのは、
優秀な工業製品である自動車を所有していたからです。
そういう工業製品を所有していなかったら、
「お金持ち」になれなかったはずです。
たとえば、10ドルの洋服を売って、3ドルのパイナップルを買ったとしたら、
財布の中には、7ドルしか入っていなかったはずです。
最近、学校において、子どもの「理数離れ」が多いと聞きます。
理科や数学が嫌いな子どもが、増えたと聞きます。
そうすると、今の子どもは、こんな選択をしているのでしょうか。
生産国家→消費国家→観光国家または文化国家。
これでは、また、パイナップルが高級品になる日が来るでしょう。
今、日本が豊かなのは、決して、当然と考えてはいけないのです。
日本が豊かな原因は、優秀な工業製品を作ってきたからです。
優秀な工業製品を作る人がいなくなれば、当然、日本は貧しくなります。
日本が工業国家でなくなると、厳しい状況になってしまいます。
なぜならば、円が基軸通貨でないからです。
これは、「豊かであることが当然」と考える、今の子供や若者に対する警告です。
今のままでは、将来、また1ドル360円に戻ってしまいます。
そうなると、またパイナップルやバナナが高級品に戻ってしまいます。
当然、1皿100円の回転寿司はなくなります。
あれは、「強い円」で、世界中から食材を買い集めているから、
1皿100円が可能となったのです。